研究シーズの泉

豊橋技術科学大学、長岡技術科学大学、国立高等専門学校の研究シーズが結集した横断的に検索可能なサイトです。

お問合せ メニュー

農耕地土壌を改良します

火力発電所石炭灰の適用性研究

ステータス 基礎 実証 実用化準備

概要

火力発電所から発生するクリンカアッシュ(多孔質の石炭灰粒子)による農地土壌の化学性、物理性、保水性の改善検討と作物栽培による効果検証を行い、①酸性土壌のpHの矯正、②砂地土壌等の保水性の改善、③保水性の改善に伴い、肥料の溶脱量を減少させ、施肥効率を改善させることに加えて、④土壌の物理性の維持(固相率の増加防止)の効果があることを確認しました。

従来技術

・植物や堆肥を活用した土壌改良
・pH値の補正を石灰等を用いた土壌改良
・土壌改良に時間がかかる

優位性

・pH値の補正と保水性、保肥性の改善を一度の施 
 用で可能となります。
・収量増加につながる可能性があります。

特徴

1.クリンカアッシュの配合割合と土壌の化学性、物理性、保水性への影響

(1)配合割合と土壌の化学性

  • 栽培前の用土では、クリンカアッシュの配合割合に比例してpH値は高くなり、酸性土壌のpH矯正に有効であることが確認できました(図1)。
  • 栽培前後の用土の肥料成分量から算出した植物体の吸収量と溶脱量の合計値は、無機態窒素、有効態リン酸、交換性塩基共に対照区が最も大きく、50%区が小さくなりました。クリンカアッシュは保肥効果を高め、施肥効率を改善させるものと推測されます(表1)。

(2)配合割合と土壌の物理性

  • 栽培前の用土では、三相構造における固相率は配合割合に比例して増加しました(図2)。
  • 栽培終了時の変化では、配合割合に反比例して固相の増加率が低くなる傾向を示し、栽培プロセスにおける固相率割合の増加を防ぐ効果が認められました(図3)。

(3)配合割合と保水性

  • 配合割合が3mmアンダーの20%及び30%試験区及び原粉の10%~30%区で、潅水2日後及び5日後に対照区の5~6倍の含水量となり、砂地等保水性の悪い土壌の改善につながることが確認できました(図4、5)。 

2.生育への影響

(1)配合割合と収穫時期

  • 配合割合の違いによる収穫時期の差は認められませんでした(図6)。

(2)配合割合と生重

  • 収穫時の生重は、キャベツでは、原粉の20%区が重くなり、クリンカアッシュの施用が収量増加につながる可能性があることが分かりました(図7)。
172_1 山内先生 図1.1.png
図1 土壌化学性(pH&EC)
172_1 山内先生 表1.1.png
表1 土壌化学性(保肥効果)
172_1 山内先生 図2.1.png
図2 土壌物理性(栽培前 三相構造)
172_1 山内先生 図3.1.png
図3 土壌物理性(栽培後 三相構造)
172_1 山内先生 図4.1.png
図4 土壌保水性(3mmアンダー)
172_1 山内先生 図5.1.png
図5 土壌保水性(原粉)
172_1 山内先生 図6.1.png
図6 収穫時期
172_1 山内先生 図7.1.png
図7 キャベツの平均生重

実用化イメージ、想定される用途

・農耕地土壌改良材料 (排水性、通気性、保水性、保肥性の改善)
・石炭灰のリサイクル事業(地域内資源循環型産業構造の構築:碧南火力)

実用化に向けた課題

・クリンカアッシュの連続施用(毎年)による影響調査
・各種ほ場の土壌条件での実証調査
・多品目作物での実証

研究者紹介

山内 高弘 (やまうち たかひろ)
豊橋技術科学大学 先端農業・バイオリサーチセンター 特任准教授
researchmap

研究者からのメッセージ(企業等への提案)

クリンカアッシュは、保水性や酸性土壌pH値を高める効果が大きく、栽培改善につながります。この技術にご興味をお持ちの企業の技術相談をお受けします。また共同研究等のご検討の際にはご連絡ください。

知的財産等

掲載日:2020年06月19日
最終更新日:2021年04月02日