概要
近年、地震などの様々な外力や経年劣化による建築物の性能低下・劣化が指摘されており、建築物の健全性のモニタリング技術の研究・開発が進んでいます。本研究室ではFBG(Fiber Bragg Grating)センサによる建築物の構造ヘルスモニタリングの適用性や計測データ分析に関する研究開発を行いました。
従来技術
・既存の建設物に追加工事や多数の配線が必要となる場合があり、計測安定性・センサ間の同時性が必要です。
・長期の計測には、計測継続性、安定性と耐久性が求められます。
優位性
・設置や追加が容易、高精度、電磁誘導ノイズを受けない、長距離データ転送が可能、防爆性に優れています。
・構造材料内部への埋め込みが可能、ガラス製なので耐久性も良好です。
特徴
【研究成果】
1.FBGセンサによる建築物の構造ヘルスモニタリング
FBG(Fiber Bragg Grating)型加速度計とそのデータ収録装置を本学総合研究実験棟(鉄骨鉄筋コンクリート造の9階建て)にて約3年間運用し、安定してデータ収集が行えることを確認しました。
- 分解能は1.5gal程度、震度1以上の地震動の固有振動数、最大応答値などの動特性の分析が可能で、長期振動のモニタリングに適用可能です。
- 光ファイバケーブル仕様のため電磁誘導によるノイズの影響を受けず、長距離(数十kmの配線可能)のデータ転送が可能です。また防爆性が必要な場合には本計測方法は極めて有用です。
2. FBGセンサによる接着接合部の損傷モニタリング
近年、既存構造物の補修や補強として用いられている接着接合には、剥離による性能低下が懸念されています。そこで、FBGセンサを接着層に埋設しておくことで、剥離の兆候や歪値の計測によって適切な性能となっているか計測する手法を開発しました。
- FBGセンサは非常に細いため、接着層に埋め込みが可能です。
- 長期間のモニタリングが可能です。
- 計測点には電源が不要です。
実用化イメージ、想定される用途
・防災管理拠点と長距離にある重要施設や防爆性要求施設などの構造性能把握
・接着接合部の健全性の把握
実用化に向けた課題
対象構造に応じた実証試験と数値解析による検証が必要です。
研究者紹介
松本 幸大 (まつもと ゆきひろ)
豊橋技術科学大学 次世代半導体・センサ科学研究所 教授
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研究者からのメッセージ(企業等への提案)
この技術にご興味をお持ちの企業の技術相談や、共同研究等をご検討の際にはご連絡ください。
知的財産等
掲載日:2020年10月12日
最終更新日:2023年06月23日