概要
量子力学や古典力学などに基づく分子シミュレーション手法を用い、病気に関与するタンパク質と薬の候補となる様々な化合物間の特異的な相互作用を高精度に解析しています。アルツハイマー病、がん、感染症などの病気に対する新規治療薬を提案することを目指し、薬学分野の研究者と共同研究を進めています。
従来技術
古典力学に基づく分子力場計算、分子動力学計算を用いた分子シミュレーションが主流でした。
優位性
・量子力学に基づきタンパク質と化合物間の相互作用を電子レベルで高精度に解析する分子軌道法を採用しています。
・計算結果を基に、タンパク質により強く結合可能な化合物を新規治療薬の候補として提案します。
特徴
アルツハイマー病、がんなどの病気を予防・治療する効果的な薬を開発することは、緊急の研究課題です。そのため、既存の薬の情報をデータベース化し、それを基に新規の薬を計算により提案する研究が進められています。また、スーパーコンピュータを有効活用し、病気の起源となるタンパク質と様々な化合物間の結合特性を解析し、その結果を基に、新規の化合物を、新薬の候補として提案する研究も進んでいます。
当研究室では、最新のスーパーコンピュータを用いて、新しい治療薬を提案する研究を進めています。アルツハイマー病、がん、感染症、結核などの病気に関与する、様々なタンパク質とその機能を制御可能な化合物間の相互作用を高精度に計算し、どのような化合物がより効率的にそのタンパク質の機能を阻害し、病気の進行を抑えることができるかを、明らかにしたいと考えています。この研究が成功すれば、これまでにない治療薬を製薬会社に提案し、新薬の開発に役立つと考えています。
【研究テーマの一部】
- フラグメント分子軌道法を用いたインシリコ創薬コンソーシアム(FMODD)への参画
様々な核内受容体タンパク質と薬の候補化合物間の相互作用を解析し、新規阻害剤を提案 - アルツハイマー病に対する治療薬の提案
この病気の発病に関与するタンパク質(アミロイドベータ、タウタンパク質)の凝集を抑制可能な新規化合物を分子シミュレーションにより提案
- 感染症に対する新規治療薬の提案
緑膿菌の感染拡大に関与する酵素タンパク質PLNと様々な化合物間の結合特性を解析し、新規阻害剤を提案 - がんの治療薬の提案:
がん転移抑制剤とその受容体との特異的相互作用を解析 - 結核の治療薬の提案:
結核の発病に関与するタンパク質と化合物間の相互作用を解析 - 分子シミュレーションによるDNA遺伝情報の転写制御機構の解明
- DNAの突然変異機構の解析、DNA 類似核酸の電気伝導特性の解析
実用化イメージ、想定される用途
アルツハイマー病、がん、感染症などの病気に対する新規治療薬の提案・開発
実用化に向けた課題
当研究室では、計算機を用いた分子シミュレーションのみ実行可能であり、本研究で提案した化合物を実際に合成し、生化学実験でその有効性を確認するためには、実験家との共同研究が必要になります。
研究者紹介
栗田 典之 (りた のりゆき)
豊橋技術科学大学 情報・知能工学系 准教授
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研究者からのメッセージ(企業等への提案)
この技術にご興味のある企業の皆様からの技術相談をお受け致します。また共同研究等のご検討の際は、ご連絡ください。
知的財産等
掲載日:2020年06月26日
最終更新日:2021年03月11日